まだ 寿命があるかも… と 言ってくれないか森茉莉全集を…
火曜日は病院でした。
胸水は 増量中…

「ゼローダが効かない…」
と へこむ主治医。
そんな主治医に

「まだ ゼローダ 2週間だから」
と 慰める私…
(主客転倒)…
主治医が

「(胸水を)抜くか?」
と 抜きたくないオーラいっぱいで 聞いたから
私は

「(苦しいから 抜きたいけど 主治医のオーラに負けて)
まだ ゼローダ始めたばかりだから もう少し頑張ります…」
と 言いました。
入院 手術 終末…
寿命が尽きる…
様々な妄想が 頭を飛びかいます。
遂に くるべき時がきたのか…
でも まだ 死にたくない…
もう少し 待ってください 運命の扉様…
あの全集読むまでは…
最近 近くの区立図書館に
大好きな『森茉莉全集』が 入ったのです…
あれ 読んでから~
っと 駄々っ子のように 私は思った。

森茉莉は 森鴎外の娘です。
ひそかなファンです…
これは 実話なのですが…
全集の中に 「注射」というエッセイがあります。
森茉莉は 6歳の時 百日咳にかかりました。
その当時(明治時代) 百日咳は
結核と同じように 死に至る病でした。
「注射」とは 安楽死させる注射のこと…
明治という時代は モルヒネとか 安楽死の注射とかが
案外 気楽に使われていた時代なのです…
すでに 茉莉の弟 普烈(フリッツ)は
百日咳で 亡骸となって 柩に入り
隣の部屋で 彼女の最期を 待っています。
百日咳の苦しみは (きっと)喘息の王様みたいに 息が苦しい
(今の私か…)
ヒィ~ っと 息を吸い込むと 咳が全身を 覆い尽くす。
呼吸器系の苦しさは 筆舌に尽くしがたい…
茉莉の 身も世もあらぬ 形相…
父母は その姿を直視できず…
心は あることに傾いていくのであった…
安楽死の注射…
すでに 主治医によって
「茉莉は 24時間以内に 確実に死ぬ」
と 余命宣告されている。
この名医の予告は はずれたことがない というので有名だった。
事実 今までは その通りだった。

父母は 茉莉の苦しみを 注射で終わらそうと 準備をさせる。
その時 茉莉の母方の祖父が 扉を ガラッとあけて現れた。
母: 「茉莉を 楽にしていただこうと 思います」
祖父: 「馬鹿!!」
「何を言う!
人間の寿命というものは 分かるものではない。
茉莉に まだ寿命があったらどうする!」
祖父は 医者の方を睨みながら 座った。
祖父の手は ブルブルと 震えていた。
祖父: 「もう 俺が知った以上は (注射は)させん。
医者も医者だ!」
その日から 3日経った夜
茉莉の病気は 奇蹟的に好転したのでありました。
心不全で 84歳で亡くなるまで
素敵な作品を 書いて書いて書きまくりました。
彼女は 自分の子供時代のことを
「毎日毎日 新しく始まる 幸福な日々だった。
長い長い 幸福な日々だった…」
と 語っています。
そんな彼女が書いた作品を 読むだけで
何故か日だまりの中でまどろんでいるような
気持ちにさせてくれるのです…

皆さま ゴールデンウィーク 愉しくお過ごしくださいませ。